人の夢を食べる獏と云う動物の話

伝説の怪物って、実在の動物が伝聞で神格化していったケースが多い。

有名な例では麒麟。

「形は鹿に似て大きく背丈は5mあり、顔は龍に似て、牛の尾と馬の蹄をもち、雄は頭に角をもつ。背毛は五色に彩られ、毛は黄色い」

と言う描写は、実際の「キリン」をみての事だけれど、これを聞いた人が描いた想像図(キリンビールのパッケージの絵とか)が、「麒麟」となった。

龍は?

揚子江に住んでいたマチカネワニだとする説が現在有力。
古文献には龍が大量に岸に上がっているとか、水滸伝には龍の肉を食った話とかが普通に出てくるので、多分実在の動物だろう。

四聖獣の他はどうなんだろう?

鳳凰(朱雀)は、プテラノドン?
玄武は、首長竜?
人の夢を食べる獏と云う動物の話まあ、これはリクガメだとする説が一般的。
まあ、この辺は想像の域を出ない。

「鵺(ヌエ)の鳴く夜は恐ろしい」の鵺は?

サルの顔、タヌキの胴体、トラの手足を持ち、尾はヘビ。

コレは元々、トラツグミの鳴き声(←youtubeとかで聞いてみて下さい。結構不気味。)から想像された動物とされる。

けど、捕縛の記述がある。
有名どころでは「平家物語」で源頼政が捕らえた記述。「源平盛衰記」も有名。

この2つに共通しているのは、コウモリの翼を持っていると書かれているところ。
なので、「平家物語」の記述はムササビの事だと言われている。
「源平盛衰記」では、尾はキツネだったと書いてあるので、モモンガかな?

見た事もない動物を既知の動物に例えているので、キメラ(ハイブリッド)の様な怪物を想像しがちだが本当はモデルがいる極めて科学的な話。

で、獏の話。

「体は熊、鼻は象、目は犀、尾は牛、脚は虎にそれぞれ似ている。白と黒の斑の毛がある」

中国の学者が初めてマレーバクを見つけた時に、これこそ伝説の動物「獏」に他ならないとして、バクと命名。
古代中国の遺跡からバクを形取ったと見られる青銅器が出土していることから、かつての中国にもバクは生息していたので、その時の伝聞が怪物として残ったものと考えられる。

この獏、日本では悪夢を食べてくれると有名なのだけれども、実は本家中国では夢を食べる話はない。

「唐六典」「大典祠部中職」に「莫奇(ばくき)」という神が夢夢を食べるという記述があり、これが獏と混同されたらしい。

しかしながら、一部、夢を食べる獏の記述が存在する。

郭璞の書によると、
「中国の南西に獏という動物がいる。熊によく似た白と黒の動物で、あんな餌のない所にいるなんて、さぞかし、人の夢や鉄の塊でも食べて暮らしているに違いない」
となっている。

確かにマレーバクは白黒だけれども、餌のない所?それは嘘でしょ。だって、ジャングルに住んでるじゃん!

竹林ばかりの餌のない場所で生き抜く為に、笹を食べて消化できる様に進化した白と黒の熊によく似た動物がいるでしょ?

そうです、パンダです。

実は「夢を食べる獏」というのは、パンダのことなんです。
中国国内でマレーバクが絶滅した後、獏と呼ばれた動物はパンダのこと。
なので、時代によって場所によって獏の特徴や記述が明らかに異なります。

日本の皇室の資料に、西暦685年に唐の則天武后から「白熊」2頭とその毛皮70枚を送られたとあります。

これは日本側の資料なのですが、唐の中国側はどうなのでしょうか?

「則天武后は熊とその毛皮を贈ろうとしたが、日本には熊がいると聞いて、日本にはいない「獏」とその毛皮を贈った」となっている。

日本側は贈り物リストの「獏」の意味が分からずに、白熊と記載しているので、ここでのやり取りは明らかに、獏=パンダですね。

世界最初のパンダ外交です(笑)。

時系列で言うと、

1.古代中国には、マレーバクが生息していて、それを獏と呼んだ。

2.マレーバクが絶滅した後、獏は伝説の怪物(←夢は食べない)となった。

3.各地でタマ~に見かけられるパンダが、伝説の獏(←夢でも喰っているんだろう?)ではないかとなった。

4.中国ではパンダ=獏(←実在の動物)となっている時代があった。

5.マレーバクが発見されて、伝説の獏ではないかとなった。→バクと命名。

6.パンダが発見されたけど、バクの名前は取られちゃったので、パンダと命名。

となるのではないでしょうか?

獏は実在したけれど、その正体は入り乱れてる(笑)と言うのが、実態でした。

ちなみに高貴な動物とされる「麒麟」、「鳳凰」、「白澤」の内、「白澤」は日本ではあまりメジャーじゃない。
なので、日本では「白澤」と「獏」が混同される傾向にある。
が、本家の中国では「獏」は他の動物の余り物で作ったあまり高貴じゃない動物とされているので、何故「白澤」と混同されているか解からないらしい。
(↑って、これは想像上の怪物での話)

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